アズマ工業での業務の傍ら、手編み箒を作るようになった渥原さん。
彼が手編み箒に魅了されていくまでの過程、今何を学び、これからどんな箒を作りたいのかを取材しました。

毎日編んでも満足しないほど、手編み箒への情熱や探求心を持つようになった彼が、より理想に近い箒を作り上げるために取り組んだこととは?

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―視野の広がりと、ほうき草プロジェクト

箒の使い勝手の良さを考えるうえで、掃き心地と手元で感じる重さは特にこだわっているポイントの一つです。
実際に箒を使ってみると、見た目は似ていても、箒によって掃き心地や手元に感じる重量感が全く違います。
掃き心地が硬いものや、手元に重さを感じるものは、ホコリが集めにくく、掃いているうちに、疲れてしまいます。適度に穂先にしなやかさがあり、手元に重さを感じない、バランスが取れた箒が理想です。

出来上がった自分の箒は、かたすぎたり、重すぎたりしましたが、はじめはその原因がわからなくて。

そこで穂の量を調整してみると、少しは良くなったのですが…。
見本にしている箒と、自分が作った箒の穂先を握って比べると、ほうき草一本一本の細さにも違いがあるとわかりました。

手元に感じる重みや穂先のしなり具合は箒によって異なる

より軽く、適度なしなやかさがある、理想の箒を追求していくと、箒作りはほうき草作りから始まっていることを改めて痛感しました。
ほうき草プロジェクトに参加し始めた数年前は、嫌々畑に足を運んでいました。それが今では理想のほうき草作りに夢中になり、試行錯誤を重ねています(笑)。
今年は、二条植え(※)や、定植間隔(※)を狭めることに挑戦しました。二条植えはまだまだ改善が必要ですが、定植間隔を狭めることで、細い茎のものをたくさん取れるようになったんです!。細すぎるものもありましたが…(笑)

※二条植え:1つの畝に2列に苗を植えて育てること
※定植間隔:ほうき草の苗を植える間隔



以前、23年9月11日のブログでは箒の選別の様子をお伝えしましたが、その時選別に使用した治具も、私が作りました。

長さの基準値を記載した手作りの治具

選別のポイントも誰かに習ったわけではなく、箒を編むうちに気づきました。
ある日短柄箒を編んでみたところ、あまりに穂先が長くなったのがきっかけでした。もしかしてこれは使用する穂の長さに規定があるのでは?!と(笑)。
意識していると、このくらいの長さのものはハンドブラシ、これは短柄箒、これは長柄箒とわかるようになってきました。

そこで、これまでほうき草プロジェクトでは太さのみを確認して選別をしていましたが、今年の収穫に合わせて治具を準備しました。

私の一番の理想は、手編み箒を作るときに穂を切りそろえないでよい状態。穂先をカットしないことで、よりしなやかな箒に仕上がり、掃き心地が良いからです。 実際は天然の原料を使うので、切らずに仕上げるのは難しいですが、選別の時点である程度仕分けをしておけば、それぞれの箒にあった長さのほうき草を使えるのでたくさん切らずに済みます。

また、かぶせ草(※)は短い方が良いので、別にしておきます。
長いほうき草はそれだけ茎が太いことが多いので、それを一番外側に使ってしまうと履き心地がかたくなってしまうためです。

※かぶせ草:箒の最も表側に使用する草


箒を作り始めたことで、ほうき草プロジェクトへの思いにも変化が生まれたようです。
次回も引き続き渥原さんへのインタビューをお届けします。