棕櫚箒(シュロホウキ)
室内を掃くのに使われている箒です。
板敷の家が多かった昔(戦前)は日本各地で使われていました。
最近はフローリングを掃くのに便利であると見直されています。
棕櫚の葉柄部分を切り落とし、そこから繊維を取り出して箒を作ります。
棕櫚の主な産地は中国で、自生しています。
但し、戦前は日本での栽培がさかんで、紀伊半島及びその以西において特に栽培されていました。
棕櫚の歴史は相当古く、弘法大師が唐から持ち帰ったとも言われています。
棕櫚箒の歴史も古く、江戸時代の早い時期から棕櫚箒が使われていたことは分かっています。
棕櫚の繊維は非常に細かく、しなやかなのが最大の特長。
繊維に油分が含まれているため、掃けば掃くほど床にツヤがでるとも言われています。
また棕櫚箒には、繊維を精製する前に箒にした「皮」と呼ばれる箒と、精製した後に箒にした「鬼毛」と呼ばれる箒があります。
座敷箒が登場する(江戸時代後半)前の室内箒はそのほとんどが棕櫚箒であったと思われます。
戦後、市場の変化で一気に衰退しましたが、今なお、一部の方にはその掃き心地に根強い人気があります。
座敷箒
室内を掃くのに使われている一般的な箒です。
大相撲で呼出しさんが土俵廻りを掃いているシーンを見たことがあるかもしれませんが、その箒です。
原料はホウキモロコシというイネ科の植物で、箒キビとも言われています。
ホウキモロコシのルーツは朝鮮とも言われ、1800年代に朝鮮通信使によって日本(江戸)に持ち込まれたと言われております。
1840年代以降、特に関東一円でほうき草の栽培がさかんになりましたが、現在は海外生産に移行し、主にタイ・インドネシア・中国で栽培されています。
座敷箒の歴史は江戸時代に始まります。武家階級にしか普及していなかった畳が中産(庶民)階級にも広がった頃(おそらく1800年以降)、座敷箒が江戸で生まれました。
畳を掃くには目に食い込む穂先が適しており、座敷箒が考案されたようです。
座敷箒のことを東箒(あづまほうき)とも言うように、関東を中心に急速に広がり、相対的な視点で言うと、東(江戸)は座敷箒、西(大坂)は棕櫚箒がそれぞれ好まれていました。
座敷箒はしなやかで適度なコシがあるため、掃きやすいのが特長です。
また、花嫁道具として持たせたとも言われるくらい丈夫で長持ちします。
例えば穂先にクセがついた場合、ぬるま湯に浸し形を整え、日陰干しをすれば、元の姿に戻ります。
手編み箒とカバー箒の2種類があり、前者は江戸時代、後者は戦後にそれぞれ始まり、掃除機が普及した現在も使われ続けています。
赤シダ箒
外を掃くのに使われている一般的な箒です。
パルミラという木の葉柄部分を切り落とし、そこから繊維を取り出して箒を作ります。
パルミラの主な産地はインド、スリランカで、自生しています。
赤シダ箒の歴史は意外に浅く、明治40年前後に棕櫚(しゅろ)箒の代替品として作られたと言われています。
以前は土間箒(どまほうき)とも呼ばれていました。
パルミラの繊維は他の天然繊維と比べ、太くコシがあるのが特長です。
また、パルミラの繊維は比較的安価に入手できるので、その分コストを抑えて作ることができます。
ただ、水に弱く、使用を繰り返すと、箒の両側がそれぞれ外側にめくれるような状態になります(どうしても葉柄部分であった頃の形状に戻ってしまいます)。
棕櫚箒が衰退した一方、赤シダ箒は戦時中の一時期を除いて、発売以来全国で使われ続け、現在日本で最も使われている箒です。
※パルミラの繊維をインド・スリランカから入手していますので、戦時中、海上権を失った時期から終戦まで日本への輸出は停止されていました。
化繊箒
化学繊維でできた箒です。天然繊維と異なり、化繊は穂先を加工できるため、用途別に種類も豊富で、室内外で使われています。
室内向けは繊維が細かく、室外向けは太いのが一般的。
また、繊維の先端を粉砕し、当たりを柔らかくしている「先割れ加工」の箒もあります。
日本に限らず、世界各国で使われています。
化繊箒の歴史は戦後から始まります。
昭和30年代後半、いわゆる「材料革命」が起こり、天然繊維が軒並み化学繊維に代わり、箒にも化繊が使われるようになりました。
化繊箒は全般的に水に強く、耐久性があります。
また、その加工性から用途・使い方に合わせた箒を作ることができます。
現在は2種類の太さの穂をブレンドしたり、天然繊維とブレンドしたりして、掃きやすさを改良した箒も登場しています。
ただ、反発力が強いため、箒によっては若干手首に負担が掛かることもあります。
黒シダ箒
外の細かいホコリを掃くのに使われている箒です。
ベランダや玄関などの掃き掃除に重宝します。
アレンという木に巻き付いている繊維を取り出し、精製して箒を作ります。
アレンの木及び繊維の主な産地はインドネシアで、自生しています。
巻き付いている繊維は採取後、5~6年すれば再び収穫できます。
収穫した繊維のうち、箒として採用されるのは全体の30%前後しかありません。
黒シダ箒は、昭和48年(1973年)にアズマ工業から初めて日本で発売されました。
当時はヒタムファイバー(現地の言葉で「ヒタム=黒い」)として販売されていました。
黒シダの繊維は非常に細かく、同じ形状の箒を作るのに、赤シダの場合1,000本の繊維が必要なところ、黒シダの場合4,000本の繊維が必要となります。
一本一本の繊維が細かく柔らかいためコシは弱めですが、水に強く(繊維は海底の電線を保護するのに使われていたくらいです)、丈夫なのも特長の一つです。
発売当初は赤シダ箒の市場価格よりも3割~5割高めであったにもかかわらず、口コミで一気に広がった箒です。
葉脈箒
庭や芝生、コンクリート面を掃くのに使われている箒です。
落ち葉などの掃き掃除に便利です。
ヤシの木の葉脈部分を取り出し、束ねて箒にします。
ヤシの木の主な産地はインドネシアで、大切に育てられています。
葉脈は枯れた状態のものはもろいため、枯れる前の葉脈を取り出し、箒に採用しています。
葉脈箒は、昭和51年(1976年)にアズマ工業から初めて日本で発売されました。
竹箒と比べ、かさばらず、丈夫なのが最大の特長。
また、葉脈一本一本が細かくコシがあるので、細かいゴミも掃き出せます。
構造上、竹箒よりも割高になりますが、竹箒のハイグレード商品としての位置づけで、現在も販売されています。